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『DROP(Drop)』映画レビュー:スマホに潜む恐怖を描く、リアル×シチュエーション・スリラーの金字塔

2025年7月11日に日本で公開された映画『DROP』(原題:Drop)は、『ハッピー・デス・デイ』シリーズで知られるクリストファー・ランドン監督による、スマホのドロップ機能を舞台にした斬新なシチュエーション・スリラーです。

上映時間95分というコンパクトな構成の中で、視覚的なサスペンスと心理的緊張を見事に融合。スマートフォンを介して展開する脅迫劇に、現代社会の恐怖と家族への愛を掛け合わせた本作は、新たな“スマホ・スリラー”の傑作として、多くの話題を集めています。

🎬 映画の詳細情報

  • 公開日:2025年7月11日(金)
  • 主演:メーガン・フェイヒー、ブランドン・スクレナー
  • 共演:ヴィオレット・ビーン、ジェイコブ・ロビンソン、リード・ダイアモンド
  • 監督:クリストファー・ランドン(『Happy Death Day』『Freaky』)
  • 脚本:ジリアン・ジェイコブス&クリス・ローチ(『ファンタジー・アイランド』)


あらすじ|“DigiDrop”が引き起こす恐怖

本作は、5歳の息子を育てるシングルマザー・バイオレット(演:メーガン・フェイヒー)が、マッチングアプリで知り合った男性ヘンリー(演:ブランドン・スクレナー)と、高層ビルのレストラン「PALATE」で初デートをするシーンから始まります。

しかし、その穏やかな夜は突如として狂気に変わる。バイオレットのスマホに、“スマホのドロップ機能”を通じた謎のメッセージが届くのです。送り主は「目の前の男を殺せ。さもなければ息子を消す」と脅迫。彼女が5歳の息子や妹を守るべく指示に従おうとする中で、真の犯人と目的が徐々に明らかになっていきます。

スマホの通信圏(約15m)の中で、密室に近いレストランという舞台設定。その場にいる全員が容疑者となる“即席相談劇”の構造が、視聴者に緊張感を持続させます。


見どころ①:限られた場所×スマホという密閉構造が生む極限の緊張感

本作は、ほぼ“レストラン+自宅”という2つの舞台で構成されています。ランドン監督は、狭い空間を巧みに使い、まるで観客自身が閉じ込められているかのようなサスペンス空間を演出します。

「スマホに映った映像がすべて」「送り主は通信圏内のレストラン内にいる」という制約が、スリラーとしての焦燥感と井戸の底にいるような息苦しさを強化しています。これは“見知らぬ相手とオンラインで知り合う”という現代の不安ともリンクし、リアリティがあります。


見どころ②:メーガン・フェイヒー&ブランドン・スクレナーの演技が光る

メーガン・フェイヒー(作中 バイオレット)

バイオレットは、過去に夫からDVを受けていたという重いトラウマを抱えています。ランドン監督との三作目で彼女の演技は冴えわたり、『白いロータス』以上に“抑えた強さ”が求められた本作で、恐怖と覚悟を自然体で演じ切りました。

ブランドン・スクレナー(作中 ヘンリー)

第一印象は「いいやつ」なのに、危機の中で光る信頼できる存在感。彼の落ち着きは観客に安心感を与えると同時に、ラストに向けての緊張感にも拍車をかけています。


個人的な感想:スマホと過去トラウマの狭間で描かれる“母の愛”

過去のDVによって心が閉ざされたバイオレットが、“息子を守るために再び行動する母親”へと変貌する魚拓のような成長は、本作の最大の柱です。序盤の不安定さや心象風景が、終盤での覚悟に繋がる構成は、ストーリーのスリリングさと感情移入の両立に成功していると感じました。

また、スマホという“日常の延長”が脅迫手段として使われることで、電子機器までもが“敵”になりうる現代の恐怖を可視化しています。これは「もし自分だったら…」と観客をぞっとさせる効果を持ちます。


総評|スマホ時代を生き抜く“デジタル・サバイバル”スリラー

映画『DROP』は、現代人にとって切実なもの――スマホ、オンライン出会い、大切な人を守る責任――を題材にした、新しいサスペンス映画のカタチと言えるでしょう。

  • 🎥シンプルな舞台の中で繰り広げられる濃密な緊張感
  • 👩‍👦母としての命がけの選択と再生の物語
  • 📱スマホUIをスリラー装置として活用した演出

この構成のバランスは見事で、“安っぽいハリウッドスリラー”では終わらない説得力があります。約95分という短尺ながら、全体として飽きさせない緩急があり、スクリーン後に残る余韻も侮れません。スマホ時代にふさわしい革新的スリラーとして、ぜひ劇場で体験していただきたい秀作です。

※映画紹介についての一連の記事はこちらにまとめていますので、是非一読ください。

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