はじめに:30年ぶりの劇場2D作品が放つ、原点回帰の衝撃

1996年に公開された『DEAD OR ALIVE』以来、実に約30年ぶりとなる2D劇場版『ルパン三世』シリーズ。その最新作が、2025年6月に満を持して登場した『LUPIN THE IIIRD THE MOVIE 不死身の血族』である。監督は『ルパン三世 THE FIRST』『ルパン対複製人間』など数々のルパン作品に携わってきた小池健。今作では、モンキー・パンチ原作のハードボイルドなルパン像をより濃厚に、より大胆に描き出す。
今作は、劇場版第1作『ルパン対複製人間』との繋がりを感じさせるストーリー構成が随所に見られ、シリーズファンにとってはまさに垂涎ものの構成だ。
🎬 映画の詳細情報
- 公開日:2025年6月27日(金)
- 出演:栗田貫一大塚明夫、浪川大輔、沢城みゆき、山寺宏一、片岡愛之助、森川葵
- 監督:小池健
- 脚本:高橋悠也
- 原作:モンキーパンチ
舞台は死の島──絶望に包まれた世界観
物語の舞台となるのは、濃霧に包まれた不気味な孤島。霧には毒性があり、24時間以内に脱出できなければ確実に死が待つ──そんな絶望的な状況下、ルパンたちは命をかけた戦いに身を投じる。
この設定だけでも極めて緊張感が高いが、それに追い打ちをかけるのが、島に潜む異形の敵たち。不気味で、どこか人間離れした彼らは、視覚的にも心理的にも観る者を強烈に不安にさせる。まさに”生理的な恐怖”がここには存在する。
ラスボス・ムオムの圧倒的存在感と絶望感
敵の頂点に立つのは”不死身”の男、ムオム。物理的な攻撃が一切通用せず、次元や五右衛門の必殺技さえ無効化されるその存在は、まさに絶望そのもの。観ている側としても「これは勝てるわけがない」と思わせる説得力があり、そこに緊迫感が生まれる。
だが、ルパンの真骨頂はここから。シリーズお馴染みの”逆転劇”が、作品後半に用意されている。ムオムの”不死”の秘密を突き止めたルパンが仕掛けるトリックと、そこに至るまでの伏線回収の鮮やかさは、まさに痛快の一言。
渋さが際立つハードボイルド演出と作画
これまでのルパン映画と異なる点は、なんといっても全編に漂うハードボイルドなトーン。ギャグやコメディ要素が抑えられ、銃声と硝煙の匂いが画面を支配する。
小池監督ならではのダークでシリアスな演出、ジェイムス下地による重厚でジャジーなサウンドが相まって、かつてないほどスタイリッシュでアダルトなルパンワールドが完成している。
キャラクター作画も、手描きアニメならではの繊細な線が生きており、特に次元・五右衛門のアクションシーンは圧巻。
スピンオフ作品との連動で世界観が深化
『不死身の血族』は単体でも楽しめるが、実はその前に観ておくべきスピンオフが存在する。特に重要なのが、映画公開の1週間前(2025年6月20日)に公開された『LUPIN THE IIIRD 銭形と2人のルパン』。
この作品は、本作の直接的な前日譚として、銭形警部の心理やルパンとの関係性を掘り下げている。Amazon Prime Videoで配信中のため、劇場に足を運ぶ前に必見の内容だ。
その他、次元、五右衛門、不二子それぞれを主人公とした短編スピンオフも過去に公開されており、これらを観ることで本作の理解がさらに深まる構造となっている。
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声優陣とB’zの主題歌が生む重厚な余韻
声優陣も超豪華。栗田貫一(ルパン三世)、大塚明夫(次元大介)、浪川大輔(石川五ェ門)、沢城みゆき(峰不二子)、山寺宏一(銭形警部)といった鉄壁の布陣に加え、片岡愛之助、森川葵、鈴木もぐら、水川かたまりといった異色キャストも加わる。
主題歌「The IIIRD Eye」を担当するのは、あのB’z。作品全体のハードボイルドなトーンにマッチした、渋さと熱さを兼ね備えた楽曲で、ラストシーンの余韻をより一層高めてくれる。
終わりに:原点に立ち返ることで見えた、新たなルパン像
『不死身の血族』は、単なるアクションエンタメではなく、原作が持っていた”ダークでハードなルパン像”に立ち返ることで、新たな表現に到達した傑作といえる。
従来のコミカルなイメージとは異なる、静謐さと緊張感が共存する作品世界。シリーズファンはもちろん、初めてルパン作品に触れるという人にも、自信を持って勧められる映画である。
今後の展開として、さらにこの路線で続編が描かれる可能性も高く、ファンとしては期待が高まるばかりだ。
なお、Amazon Primeでは『銭形と2人のルパン』をはじめ、これまでのスピンオフシリーズも視聴可能。ぜひ劇場に足を運ぶ前後に併せて鑑賞し、シリーズの全貌を味わい尽くしてほしい。
※映画紹介についての一連の記事はこちらにまとめていますので、是非一読ください。