2025年7月18日に劇場公開された『劇場版 鬼滅の刃 無限城編 第一章 猗窩座再来』は、シリーズ最終章3部作の幕開けとして、ファンの期待を一身に背負いながらついに公開された。155分という長尺ながら、全編を通して緊張感と迫力に満ちた構成で、観客の心を一瞬たりとも離さない映像体験となっている。
🎬 映画の詳細情報
- 公開日:2025年7月18日(金)
- 出演 :花江夏樹、鬼頭明里、下野紘、松岡禎丞、上田麗奈、石田彰
- 主題歌:Aimer LiSA
- 監督 :外崎春雄
- 原作 :吾峠呼世晴
■ クライマックスに突入する「鬼滅の刃」の世界観
youtube アニプレックスチャンネルより引用
これまでの「無限列車編」「遊郭編」「刀鍛冶の里編」、そしてテレビシリーズの「柱稽古編」を経て、物語はいよいよ終盤に突入する。前作ラストでは、鬼舞辻無惨が鬼殺隊本部に襲来。隊士たちは無惨の術により異空間『無限城』に強制転移させられ、物語は怒涛の展開を迎える。
この『無限城編 第一章』では、無限城に突入した鬼殺隊の面々が次々と上弦の鬼と遭遇。特に本作では、炎柱・煉獄杏寿郎の仇敵である上弦の参・猗窩座(あかざ)との因縁の戦いが中心に描かれている。
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■ 猗窩座の哀しき過去と、戦いに込められた想い
猗窩座は、これまでの物語でも印象的な敵キャラの一人だ。かつて煉獄を殺した因縁の存在として、炭治郎にとっては倒すべき強敵であり、仲間の無念を晴らす戦いでもある。
だが本作では、猗窩座の過去も深く掘り下げられており、なぜ彼が鬼となったのか、その背後にあった愛と絶望、そして人間としての哀しみが丹念に描かれる。視聴者は、単なる”悪”としてではなく、彼の選んだ道に複雑な感情を抱かずにはいられないだろう。
とはいえ、鬼として他者の命を奪ってきた罪は重い。炭治郎はその信念に従い、どれほど相手に哀しき背景があろうとも、人間の命を守るという正義のもとに立ち向かう。その戦いには、物理的な力だけでなく、精神的な信念や矜持がぶつかり合い、視聴者に深い感動をもたらす。
■ アニメーションのクオリティは映画水準の頂点
アニメーション制作を担当するufotableの本気度は今回も健在。無限城の構造や戦闘描写における美術、カメラワーク、エフェクト、色彩表現は、まさに劇場版ならではの圧倒的なクオリティ。スローモーションを駆使した戦闘描写や、キャラクターの表情の細かい描写まで、画面の隅々にまで魂が込められている。
炭治郎、善逸、伊之助といったおなじみのキャラクターたちも、今までにないほど成長した姿で登場し、物語により厚みを加えている。
■ 音楽と演出の融合がもたらす没入感
音楽は梶浦由記と椎名豪による劇伴が全編を通して効果的に使われ、戦闘シーンでは躍動感を、感情のぶつかり合いでは繊細な余韻を引き出す。主題歌にはAimerとLiSAが名を連ねており、作品の世界観と見事にシンクロした楽曲がエンディングを彩る。
また、監督の外崎春雄による演出も冴え渡っており、テンポよく進行する展開に観客は息を呑む瞬間が何度も訪れる。視覚・聴覚ともに全力で没入できる演出が施されている。
■ 『鬼滅の刃』が描く「善と悪」の境界線
『鬼滅の刃』が他のバトルアニメと一線を画す理由の一つは、敵である鬼にも人間だった頃の物語を持たせることで、視聴者に多面的な視点を提示する点にある。本作の猗窩座もその例に漏れず、「人間として大切なものを失い、鬼になるしかなかった者」という側面を描いている。
しかし、炭治郎の姿勢は一貫している。どれほど鬼に哀しみの理由があろうとも、それによって人を殺すことは正当化できない。これが物語に通底するテーマの一つであり、戦いの中で観客自身もその是非を問われるような感覚を味わう。
■ 第二章、第三章への布石と期待
『無限城編 第一章』は、まさに序章としての役割を果たしつつ、一本の映画としても十分な完成度を誇っている。だが同時に、明らかに次作、そして最終章への大きな布石がいくつも打たれており、期待感を否応なしに高めてくれる。
新たに登場する上弦の鬼たち、鬼舞辻無惨との最終決戦、そして炭治郎たちの運命──すべてがこれからさらに大きな物語へと加速していく。その最前線を担う本作は、『鬼滅の刃』ファンにとって見逃せない一作であり、まさに感情の総決算とも呼べる出来栄えだ。
※映画紹介についての一連の記事はこちらにまとめていますので、是非一読ください。