映画紹介

『クスノキの番人』映画レビュー――想いは、正しく届くのか。

クスノキの番人_アイキャッチ

はじめに|東野圭吾が描く“祈り”の物語

2026年1月30日公開の映画『クスノキの番人』は、東野圭吾による同名小説を原作としたヒューマンミステリーである。
これまで数多くの社会派サスペンスや心理ミステリーを生み出してきた東野圭吾だが、本作はその中でも異色の存在と言える。

犯罪でもなく、完全なファンタジーでもない。しかし確かに“超常的な力”が存在する物語。

舞台となるのは、月郷神社に立つ一本のクスノキ。
祈れば願いをかなえてくれるというその木には、不思議な力が宿っている。

だがこの物語の本質は、願いが叶うことではない。
それは、「想いが正しく伝わるのか」という問いにある。

現代社会では、言葉は溢れ、情報は即座に届く。
それでも人は、肝心な想いをうまく伝えられない。

本作は、そのもどかしさを、一本の大樹を通して描いた物語である。

🎬 映画情報

  • 作品名:クスノキの番人
  • 公開日:2026年1月30日
  • 監督:伊藤智彦
  • 原作:東野圭吾
  • 脚本:岸本卓

キャスト

  • 直井玲斗:高橋文哉
  • 柳澤千舟:天海祐希
  • 佐治優美:齋藤飛鳥
  • 大場壮貴:宮世琉弥
  • 佐治寿明:大沢たかお
  • 柳澤将和:子安武人
  • 柳澤勝重:田中美央
  • 大場藤一郎:神谷明
  • ほか:津田健次郎、杉田智和、八代拓、上田麗奈、飛田展男 ほか

あらすじ

youtube アニプレックスチャンネル より引用

理不尽な解雇によって職を失い、追い詰められた直井玲斗。
衝動的な過ちを犯し、逮捕されてしまう。

そんな彼の前に現れたのが、亡き母の腹違いの姉であり、大企業・柳澤グループを支えてきた女性、柳澤千舟だった。

彼女は釈放と引き換えに、ある条件を提示する。

「月郷神社のクスノキの番人になりなさい」

その木は、祈れば願いが叶うと言われる存在だった。

戸惑いながらも番人となった玲斗は、
クスノキに通う男・佐治寿明、その行動を怪しむ娘・佐治優美、家業を継ぐことに葛藤する青年・大場壮貴らと関わる中で、クスノキが持つ本当の力に近づいていく。

それは、願いを叶える力ではなく――“想いを正確に伝える力”だった。

\映画「クスノキの番人」公式ホームページも是非参照ください/
映画『クスノキの番人』2026年1月30日(金)公開


感想:クスノキと人々の想い

1.クスノキの超常的な力による「想いの継承」

本作の最大の魅力は、クスノキが持つ超常的な力である。

しかしその力は、奇跡を起こす万能装置ではない。
それは、“人の想いを正しく伝える”という極めて限定的で、しかし決定的な力だ。

本来、想いとは形がない。
言葉にすれば歪み、沈黙すれば誤解を生む。

人は誰しも「伝えたつもり」になり、そして「伝わらなかった」と嘆く。

クスノキの力は、その歪みを取り除く。

しかしここで重要なのは――
その力が必ずしも良い結果を導くという保証はないという点だ。

現代社会では、人はそれぞれ事情を抱え、単純な「伝達」ですら、思惑や打算が混じる。
正しく伝えたつもりでも誤解が生じて、結果、上手くいかなくなることもある。

クスノキを通して伝えられる想い自体は隠し事のできない純粋なものであるかもしれないが、それを受け取った人間の想いまでが純粋とは限らない。

その複雑さが、物語に神秘的な深さを与えている。

伝えた想いの先に、皆の喜ぶ結果が待っているとは限らない。
それでもクスノキは、正確に“届けてしまう”。

そこに、本作の静かな残酷さと美しさがある。


2.そのための「番人」

主人公・玲斗が任される“番人”という役割。
それは単なるクスノキの管理人ではない。

参拝者の複雑な想いを理解し、最も良い方向へ導く存在。

これは、作者から未熟な人間という種への慰めのようにも感じられる。

人は、真に心をさらけ出し、誤解なく分かり合うことがまだできない。
それが理想だと分かっていながら、現実には到達できない。
その悔しさを、クスノキという存在に投影しているようにも思える。

しかし一方で――

誤解にまみれ、本心が伝わらなかったとしても、人は人を導くことができる。

玲斗は完全な存在ではない。むしろ未熟で、過ちを犯した青年だ。
だからこそ彼の成長が意味を持つ。

番人とは、
奇跡を起こす者ではなく、人と人の間に立ち、静かに橋を架ける者なのだ。


3.クスノキはただ「在る」のみ

物語はクスノキの神秘的な力を核に進んでいく。

しかしクスノキそのものは、何も語らず、何も判断しない。
善も悪もなく、ただそこに在り、想いを伝えるだけ。

人間がクスノキに想いを届け、それを人間が受け取って、人間の物語が交差する。
だがクスノキは、ただ在るだけだ。

それは自然そのものの象徴でもある。

人間の悩みも葛藤も、大きな時間の流れの中では一瞬の出来事に過ぎない。
それでも、その一瞬は人にとっては人生そのものだ。

クスノキは、そのすべてを見つめ続ける存在なのだろう。


総括|“伝えること”の尊さ

『クスノキの番人』は、派手な展開の映画ではない。

しかし静かに胸に残る。

願いが叶う物語ではなく、想いが届く物語。

それは現代において、何よりも難しいことだ。
スマートフォン一つで言葉が飛び交う時代。
それでも本音は届かないことも多い。

この映画は、
「それでも人は人を理解しようとする」という希望を描いている。

おすすめしたいのは、

  • 家族との関係に悩んだことがある人
  • 伝えられなかった言葉を抱えている人
  • 東野圭吾作品の新しい側面を見たい人
  • 静かな余韻を楽しみたい人

感動を強制する映画ではない。
だが観終わった後、きっと誰かに何かを伝えたくなる。

それこそが、この作品の力である。

※映画紹介についての一連の記事はこちらにまとめていますので、是非一読ください。

ABOUT ME
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昭和53年生まれ大阪出身。45歳で婚活開始し、24歳年下女性と結婚を前提に交際しています。その他、仕事についても20年以上務めた会社を退職、新たに士業への転身を行いチャレンジを続けています。同輩にとって益のある最新情報をお届けすべく、日々奮闘中です。趣味は映画と旅行。
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